2022年09月14日ガストロノミーツーリズム
「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム 奈良」
「第7回UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラム」が2022年12月12日~12月15日の期間で奈良県コンベンションセンターにて開催されました。
ガストロノミーとは「食と文化の関係を考察すること」という意味です。
そして、ガストロノミーツーリズムとは「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的としたツーリズム」という意味合いであります。
このガストロノミーツーリズムの世界フォーラムが奈良の地で開催される事は大変意義深いものがあると感じています。
そこで、ガストロノミーの観点から「奈良漬」という食を考えてみました。
奈良漬には約1200年~1300年の歴史があると云われています。1986年に長屋王(684~729)の邸宅跡から発掘された木簡に記載されていた「加須津毛(かすづけ)」等の記載がある事がその根拠だとされています。当時の貴族の食文化が偲ばれ、大変興味深いものがあります。
奈良時代の天平年(729~749年)の木簡に「瓜の塩漬け」と残されています。この記述が、近年注目されている「発酵食品」の文献上日本最古の記録であるともされています。
また、清酒発祥の地が奈良の正暦寺とも考えられており、奈良という地の歴史的な素晴らしさを改めて感じます。
そして、その清酒を搾る際の副産物が「さけ粕」です。
奈良時代から存在した「瓜の塩漬け」を「さけ粕」で漬け込む事によって「奈良漬」が生まれたのは自然な事であり、また必然的な事であったのでしょう。それらを原材料とする「奈良漬」が日本を代表する発酵食品の一つとして位置づけられているのも自然な事だと考えています。
昔から奈良の水は、世界遺産にも認定されている「春日原生林」を源流とした非常に清らかな水とされ、弊店の住所も少し前までは通称「清水町」とも呼ばれていました。
そういった歴史的な背景、環境、気候等、様々な要因があってこそ「奈良漬」が生まれたと考えています。
奈良の野菜、奈良の「さけ粕」を優先的に使用し、当然のことですが奈良市内で漬け込む事を弊店では大切に考えています。
「日本を代表する食文化である奈良漬を自然な形に戻したい。」
この思いが弊店の進むべき方向だと考えます。
奈良漬の原料野菜は殆どが夏野菜であり、日本酒が絞られるのは12月~1月の寒い時期です。
全てを同時期にご覧頂くことは時期的に難しいですが、地元栽培農家や地元の酒蔵、弊店工場、食の器として400年以上の歴史のある奈良を代表する焼き物である赤膚焼きの窯元を見学に来られています。
そういった活動に取り組む事により、奈良の観光、「奈良漬」という奈良を代表する食文化と、その背景にある歴史的、文化的な魅力を少しでも発信出来ればと考えております。
奈良屋本店は現在、一般財団法人アジア太平洋観光交流センター(APTEC)の賛助会員です。
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