2026年07月20日奈良漬とシルクロード。
古い新聞の切り抜きの中に、「漬物木簡が語る」という記事を見つけました。
紙面には、「久保 功」というお名前とともに、「奈良」「平城宮」「木簡」「漬物」「奈良時代」「トウガン」「ウリ」「ショウガ」「インド」「シルクロード」といった言葉が、はっきりと読み取れます。
この記事を書かれた久保 功さんは、亡き父の友人でした。
何度も当店へ足を運んでくださり、ご自身で調べられた新聞や資料を広げながら、奈良の食文化や漬物、野菜がたどってきた歴史について、さまざまなお話を聞かせてくださいました。
その中で、私が若かった頃から特によく覚えているのが、シルクロードのお話です。
インドや、さらに遠い土地に生まれた植物や食文化が、人から人へ、土地から土地へと伝わり、長い年月をかけて奈良へ届いたのではないか。
久保 功さんは、そんな壮大な道のりに思いを馳せながら、シルクロードについて何度も熱心に語っておられました。
久保 功さんは、野菜や漬物の文化史を長年にわたって調べ、奈良時代の木簡に残された食の記録についても、著作や講演などを通して世に伝えておられました。
古い紙面の中に残された「インド」と「シルクロード」という文字を目にしたとき、資料を前に語ってくださった久保 功さんの姿や、その声が、ふいによみがえりました。
紙面は年月を重ね、細かな文章のすべてを正確に読み取ることはできません。
けれども、久保 功さんがシルクロードについて繰り返し話してくださったことは、私自身の記憶として、今もはっきりと残っています。
トウガン、ウリ、ショウガ。
私たちにとって身近な植物も、もとをたどれば、はるか遠い土地に生まれ、数え切れないほどの人々の手を経て、日本へ、そして奈良へ伝わってきたのかもしれません。
奈良漬とシルクロードの間に、どのようなつながりがあったのでしょう。
奈良漬そのものがシルクロードを通って伝わった、という単純な話ではないのかもしれません。
それでも、漬けられた野菜の来歴や、それを育てる知恵、保存する技術、食べる文化まで視野を広げてみると、奈良漬の向こう側にも、遠い国々から続く長い時間が重なっているように感じます。
一切れの奈良漬の中にも、私たちの想像を超える、長い旅の記憶が重なっているのかもしれません。
奈良屋本店は、この古い新聞記事を眺めながら、久保 功さんが語ってくださったシルクロードのロマンと、父を通じていただいたご縁に、あらためて感謝し、思いを馳せています。
出典:1998年9月27日付「漬物木簡が語る」久保 功氏



