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2026年06月15日奈良漬の「旨み」と「コク」、そして奈良屋本店が見つけた答え

 

 

 

 

    

奈良漬の味わいを語るとき、「旨み」と「コク」という言葉が使われます。この二つは、似ているようでまったく別のものです。

旨みは、科学で説明できます。酒粕が時間をかけて熟成する過程で、アミノ酸やグルタミン酸が生成されます。これらの成分量は分析によって測定可能であり、ある程度の予測も可能です。

一方、「コク」とは何か。この問いに、私たち奈良屋本店は長年向き合ってきました。

塩分濃度や糖度を測定しても、データ上は問題がない。それでも、舌で感じる「何か」が足りない。そう感じたことが、この問いの出発点でした。

ここで重要なのは、糖度と甘味度数は同じではない、という点です。糖度はあくまで糖類の含有量を示す数値ですが、甘味度数とは、人が舌で実際に感じる甘さの度合いを指します。同じ糖度であっても、他の味(特に塩味)とのバランスによって、感じられる甘さは大きく変化します。この、データだけでは測れない領域に、私たちが探していた答えがありました。

今から20年前、奈良屋本店は一つの結論に至りました。

私たちが求める「コク」とは、甘味と塩味のバランスである、ということです。

旨み成分がいくら豊富であっても、甘味と塩味のバランスが整っていなければ、コクは立ちません。塩味は、それ自体が主役になることはありませんが、音楽におけるコントラバスのような重低音として、甘味というメロディーを根底から支えている——そう私たちは考えています。目立たないところで全体を支える存在こそが、味の土台となります。

これは、奈良漬全般に当てはまる結論ではありません。砂糖を使わない製法を選ぶ蔵元もあり、それぞれの蔵には、それぞれの「コク」への考え方があります。あくまで、これは奈良屋本店が、40年以上にわたる現場での経験と試行錯誤の中から見つけた、私たちなりの答えです。

奈良屋本店は、奈良県で唯一のJAS認証奈良漬製造元として、酒粕・野菜・漬け込みのすべての工程を奈良県内で完結させています。使用する酒粕は、奈良の蔵元・春鹿(今西清兵衛商店)のものに限定し、みりん粕は使用していません。添加物も使用せず、甘味料には種子島産サトウキビ由来の粗糖のみを用いています。

データで説明できる部分(旨み・成分・JAS認証という第三者認証の枠組み)と、データだけでは説明できない部分(コク・甘味度数・職人の感性)。その両方を大切にしながら、これからも奈良漬と向き合っていきます。

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