2026年06月12日商人(あきんど)として ― 奈良漬づくりと、生産農家とのパートナーシップ

奈良漬づくりは、一年半先を見据える仕事です。
野菜の種をまき、奈良の地で育て、塩漬けにし、酒粕に幾度も漬け替える。
一つの奈良漬がお客様のもとへ届くまでには、収穫から数えても一年半という歳月がかかります。そして売上として戻ってくるのは、さらにその先です。
つまり奈良漬づくりは、一年半も前から先行して費用を投じ続ける、タフなビジネスです。
野菜を仕入れ、酒粕を確保し、時間をかけて熟成を待つ。その間ずっと、先行投資が続きます。
近年、気候変動の影響で、農作物の価格は全国的に上昇しています。猛暑、長雨、不安定な天候。畑で作物を育てる現場の負担は、年々重くなっています。
それでも、奈良屋本店に奈良産野菜を供給してくださる地元の生産農家の皆様は、「価格を上げてほしい」とは、一言もおっしゃいません。
だから私は、こちらから「少しでも値段を上げてください」とお願いしました。
これは商いの、当たり前の道理だと思っています。
奈良屋本店は、ビジネスマンである前に、一人の商人(あきんど)でありたいと考えています。商人とは、自分だけが儲ける者ではなく、関わるすべての人と共に栄えてこそ、長く続いていく存在です。売り手よし、買い手よし、世間よし。
古くから伝わるこの三方よしの考えを、私は信じています。
奈良屋本店は、国のパートナーシップ構築宣言に登録し、取引先や生産者との共存共栄を、言葉だけでなく実際の行動として実践しています。今回の価格の見直しも、その一つです。また、奈良県SDGsアドバンス認証企業として、持続可能な農業と地域経済への貢献を、日々の商いの中で大切にしています。
生産農家が続けられなければ、奈良産の野菜は途絶えます。
そうなれば、種の調達から栽培、塩漬け、酒粕漬け、パッケージまで、すべての工程を奈良で行うという、奈良屋本店の根幹も失われてしまいます。農家と奈良屋本店は、どちらか一方だけが生き残ることはできません。
共に続くか、共に途絶えるか。それが現実です。
先行投資の続く、決して楽ではない現状の中であっても、これは必要な判断でした。目先の損得ではなく、長く続く関係を守るための、商人としての選択だったと確信しています。
奈良屋本店は、奈良県唯一のJAS認証奈良漬メーカーとして、また奈良県SDGsアドバンス認証企業として、地元の生産農家と共に、奈良の地で奈良漬を漬け続けています。これからも、持続可能なパートナーシップ構築宣言と、ともに栄える商いを大切にしてまいります。


