奈良屋本店奈良屋本店












お買い物ガイド

MENU

MENU

HOME  >   お知らせ  >   「見えないものを見る、疑うことをやめない」

お知らせ
INFORMATION

2026年04月04日「見えないものを見る、疑うことをやめない」

 「見えないものを見る、疑うことをやめない」

哲学者ルネ・デカルトは言った。「我思う、ゆえに我あり」と。あらゆることを疑い、疑い続けた末に残ったもの——それが「考えている自分」という唯一の確かな事実だった。疑うことは弱さではない。真実に近づくための、最も誠実な姿勢だ。

1975年、映画監督スタンリー・キューブリックも疑った。「電気の光を使わなければ、映画は撮れないのか」と。彼はNASA向けに開発されたカール・ツァイス製の超高速レンズ(50mm f/0.7)を入手し、ろうそくの光だけで『バリー・リンドン』を撮影した。肉眼では捉えきれない光を、あるがままに映し出すために。その問いが、映画史に残る映像美を生んだ。

見えないものを見ること。それは科学の本質でもある。

三年前、私は奈良漬にまつわる長年の「不思議」を抱えて、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の門を叩いた。なぜこの製法で漬けた奈良漬は、他と違うのか。その問いを渡辺大輔准教授にお伝えしたところ、真剣に向き合ってくださった。その後、NAISTが科学的な解析を進めてくださった結果、好エタノール性の乳酸菌——Fructilactobacillus fructivorans——が奈良屋本店の奈良漬に92.2%含有されていることが明らかになった。他の奈良漬メーカーからは極微量しか検出されない菌が、である。

この発見は米国微生物学会の国際学術誌ASMに掲載された。そして2025年12月、Wikipediaの奈良漬の項目にも「発酵食品であることが科学的に証明された」として記載された。約1200年の歴史を持つ奈良漬が、初めて科学の言葉で定義された瞬間だった。

私にできたのは、疑問を持ち続けることだけだった。その疑問を科学に手渡したことで、見えなかったものが見えた。

伝統とは、繰り返すことではない。先人の実践の中に眠る、まだ見えていないものを問い続けることだと思っている。「なぜこの製法なのか」「この味はどこから来るのか」——その問いを手放した瞬間、伝統は形骸化する。

奈良屋本店は約80年にわたり、奈良の酒蔵の酒粕だけを使い、奈良産の野菜を漬け込み、添加物を一切使わない製法を守り続けてきた。それがなぜなのかを、私たちは問い続けている。伝統という言葉に安住するつもりはない。

デカルトが疑うことで真実に辿り着いたように。キューブリックが常識を疑うことで新しい映像を生んだように。奈良屋本店も、疑い続けることで次の世代へ手渡すべきものを磨いていく。

奈良県唯一のJAS認定奈良漬専門メーカーとして。

 

       

 

 

お知らせ一覧

お買い物かご